税理士資格の取得を目指して勉強してきたという人の多くが、将来的には独立して自分の事務所を持つことを目標にしていると思います。
しかし、独立にはリスクがつきものです。
ひと昔前であれば「街の税理士さん」といえば安定的なニーズがある人気の職業でしたが、現在は会計ソフトの普及や経理代行業者の増加によって「あえて税理士報酬を支払って税理士と契約する」という企業経営者は少数派になっているというのが実情です。
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個人事業主の顧客を狙えば独立できる?
社長が一人で事業を始めたばかりの個人事業者の確定申告などであれば、まだまだ税理士による経理代行へのニーズもあると思いますが、はっきりいってこの段階の顧客層というのは税理士側としてうまみがある顧客ではありません。
というのも、この規模の顧客層をメインとした場合、会計システム会社や大規模な経理代行業者とパイを奪い合うことになってしまうからです。
従業員数人規模の開業税理士の場合、このビジネスモデルでは通用しなくなっているというのが現状で、今後この傾向はさらに進んでいくと思われます。
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中小規模の法人顧客を狙えば独立できる?
もう少し大きな顧客(従業員30名程度で年商数億円の企業)を狙うという場合も開業税理士が置かれている状況が厳しいことに変わりはありません。
この規模の企業であれば、給与計算や年末調整も自社内で処理できてしまいますし、法人税の申告も会計ソフトを使って簡単にできるようになっています(1ヶ月数千円程度で使える会計ソフトでも、ソフト開発業者のサポートが非常に充実してきています)
税務調査も事業会社で経理部長クラスの実務をやった経験のある人なら自力で対応するケースがむしろ一般的です。
これから開業を考えている方は、これらの規模の企業に対して付加価値のあるサービスを提供できるか?はじっくりと検討する必要があります。
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会計事務所で数年修行して独立…が厳しい
「税理士資格を取得したら会計事務所で数年間修行してすぐに独立。地元のお客さんを回れば自然と顧問契約をしてくれるお客さんが出てくるだろう…」
という考え方で独立してしまった場合、その後3年〜5年経っても赤字状態…という開業税理士も決して珍しくはないと言うのが実情なのです。
10年前とは税理士業界の状況は確実に変化しているということは理解しておきましょう。
資格スクール等はこういった新しい状況を加味することなく「将来有望で独立も目指せる税理士を目指そう!」という広告宣伝をしているということを知っておいてください(逆に、こういう税理士業界の最新の実情をきちんと説明している資格スクールは良心的だと思います)
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税理士になっても独立はできないのか…?
ここまでお読みになって、「せっかく苦労して取得した税理士資格なのに、独立という本来の目標につなげることは難しいのか…?」と不満に感じたという方も多いかもしれません。
結論から言うと、税理士資格者はこれから独立がまったく見込めないというわけではありません。
ここからは税理士が将来的に独立開業を実現する現実的なプランについて解説させていただきます。
独立するための現実的なプラン
実際に、税理士として独立し成功している人たちも一定数以上います。
ただ、彼らの多くは単純に「独立さえすればなんとかなる」というような意識では独立という選択肢を選んでいないという違いがあるのです。
結論から言うと、利益をしっかり出している開業税理士には「圧倒的な業務クオリティを訴求できる専門分野がある」という特徴があります。
次で具体的なケースをみてみましょう。
税理士法人レガシイやチェスターの例
「資産税は儲かる」という話をよく聞くとは思いますが、この分野でうまくいっている開業税理士をケーススタディとして見ていきます。
例えば、相続税に関する分野では税理士法人レガシイや税理士法人チェスターといった資産税分野に特化した税理士法人が規模を拡大しています。
成功要因の1つとして、インターネット経由の集客がうまくいっていることが挙げられると思います。
相続税申告など資産税関連の依頼の多くは現在はインターネット経由での集客(マーケティング)が基本になっています。
「相続税申告 東京」で検索してみる
試しに「相続税申告 東京」などの検索ワードでグーグルやヤフーで検索して見てください。
検索結果上位には大手税理士法人や資産税特化型の税理士法人のサイトが上位にあると思います。
彼らはこの検索順位をキープするためにウェブ制作会社に多大な費用を投下してサイト運営を行なっています(こういったウェブサイトを作るためには数百万円規模の初期投資と、毎月のSEO費用や広告費用が必要です)
経験が浅く資金力も小さい開業税理士が「相続税申告はうちにおまかせください!」という個人ブログを作ったとしてもとても太刀打ちできない…というのが実情なのです。
集客ができないことには売上は上がらないという点では税理士もその他のビジネスとまったく同じですから、「まずはどこからお客さんを集めてくるのか?」ということを考えるのはこれから独立を考える人にとって外してはいけないポイントとなります。
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まだ経験の浅い税理士が選択すべき道は?
税理士法人レガシイやチェスターを立ち上げた税理士たちも、最初は会計事務所で修行していた1人の勤務税理士だったはずです。
資金力、実務経験ともにまだ浅い税理士資格者が将来的に独立開業を目指すのであれば、まずは「自分の専門性を高めるためのステップ」を踏むことをおすすめします。
具体的には「小規模会計事務所に勤務(あるいは経理事務スタッフ)」という今のレベルから一歩出て、大手税理士法人や事業会社での経理幹部などのハイレベルな実務を経験することを選択肢に入れてみてください。
専門性の高い企業での自分の税理士としての特化分野の経験をつみ、そこでつちかった経験やコネ、資金をもとに将来の独立の準備をすることで、独立後にも安定的な顧客獲得を見込めるというわけです。
税理士にはどんな転職先がある?
税理士資格に合格しており、会計事務所や経理事務などの実務経験が3年以上ある方であれば、次のような転職先が選択肢に入ります。
- 外資系大手税理士法人(BIG4)
- 国内大手の税理士法人(辻本郷など)
- 資産税や医療に特化した税理士法人
- 一般事業会社の経理幹部職
- 財務系のコンサルティングファーム
これらの転職先ではスタート時の年収も600万円前後〜が期待でき、30代で1000万円プレーヤーになることも難しいことであはりません。
開業のための資金を貯めるという意味でもこのステップを踏むことは重要と言えるでしょう。
最終的に独立しないという選択肢も
このステップで高い収入を得ながら自分の専門性を高めていくとともに、最終的に独立するかどうかの決断を行えば問題ありません。
勤務税理士としてキャリアアップを目指していくと言う道には、独立開業を選んだ場合には得られないメリット(レベルの高い実務経験と安定的な年収)があります。
現在、会計事務所や経理事務をやっていて、税理士資格を取得することに合格したという方は、次のステップとしてより専門性の高い大手税理士法人や、事業会社の経理幹部の道をターゲットにしてみることをおすすめします。
独立をするかどうかについてはこのステップを踏んでから慎重に判断しても決して遅くはありませんよ。
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