オリンピックは紀元前9世紀(今から3000年近くも前です)から行われている競技会です。
ものすごく長い歴史のある大会なのですが、もともとは「神様にささげるお祭り」だったことをご存知でしょうか?
この記事では、オリンピックの語源由来や歴史について、簡単にわかりやすくまとめました。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
オリンピックの由来とは?
オリンピックは「ギリシアの神様にささげるお祭り」に由来があります。
つまり、昔のオリンピックは神様の前で素晴らしい競技をして、喜んでもらうための宗教的なものだったのです。
ここでいう「神様」というのは、イエスキリストではなくて、古代ギリシアの神様のことです。
(なにせオリンピックが始まったのは、イエスキリストが生まれるよりも900年も前の話です)
古代ギリシアの神様には、ものすごくたくさんの種類がいます。
↓たくさんいる神様の中でも、「もっともパワーを持っている」とされていた神様のことを「オリュンポス十二神」と呼んでいます。
オリュンポス十二神とは
- ゼウス(ジュピター):一番強い神(神々の王)
- ヘーラー:ゼウスの妻
- アテナ(ミネルヴァ):知恵や工芸品の神様
- アポロン:芸術の神
- アフロディテ(ヴィーナス):愛と美の神
- アレス(マルス):戦いの神
- アルテミス(ダイアナ):狩猟や豊穣の神
- デメテル:農業の神
- ヘーパイストス:炎の神
- ヘルメース(マーキュリー):旅人の神
- ポセイドン(ネプチューン):海の神
- ディオニュソス(バッカス):お酒の神
「オリュンポス十二神」
↑なんだか「オリンピック」と名前が似ていますよね。
そうです。オリンピックとは、もともとはこのオリュンポス十二神にささげるためのお祭りだったのです。
なお、「オリュンピア」とは、今のギリシアがあるペロポネソス半島西部に位置する古代ギリシアの都市のことでもあります。
オリンピックはいつから行われているの?
オリンピックが最初に行われたのは紀元前9世紀ごろと言われています。
これは気が遠くなるほどのものすごい昔です。
↓どのぐらい昔か?というとこのぐらい昔です。
紀元前9世紀はどのぐらい古い?
-
- 日本人はまだ文字も何も持っていません。
- イエスキリストが生まれるよりも900年ほど前です。
- ブッダが生まれるより400年ほど前です。
とにかくとてつもなく古い時代ですが、この頃に始まったオリンピックが現代まで続いているのはすごいことですよね。
(もっとも、後には1000年以上もの中断時期がありました。後で見るようにオリンピックは「古代オリンピック」と「近代オリンピック」に分かれます)
>>古代オリンピックと近代オリンピックの違いについてはこちら
上で見たように、古代オリンピックは神様に捧げるためのお祭りでした。
一方で、現在行われている近代オリンピックは純粋な協議会として行われています。
オリンピックはもともと「4大競技大祭」のうちの1つだった
上で見てきたように、オリンピックはもともと神様にささげるためのお祭りでした。
同じの意味で行われていたお祭りには、オリンピックの他にもあと3つ(オリンピックを入れて合計4つ)あったのです。
↓これら4つの大会は「4大競技大祭」といわれていました。
4大競技大祭とは
- オリンピック(もともとの名前は「オリュンピア大祭」)
- ネメアー大祭
- イストモス大祭
- ピューティア大祭
このうち、オリンピックが当時からもっとも大きなお祭りでした。
もっとも大きなお祭りだけが、今の時代にまで伝えられているというわけです。
オリンピックの期間中は戦争が休戦になっていた
こうしたお祭りが行われる間は、戦争状態にあった国同士でもいったん休戦になるルールになっていました。
紀元前の話ですから、剣や槍を持って年中戦争をしている時代です。
当時の人たちは神様を深く信じていましたから、「神様のためにささげるお祭りをやるときぐらいは戦争をやめよう」ということになっていたのです。
もちろん、「オリンピックなんかどうでもいいから戦争だ!」という国もあったでしょう。
しかし、オリンピックの期間中だけでも戦争を休戦しようとしない国は、お祭りに参加させてもらうことができないルールになっていました。
当時の人たちもオリンピックに参加することはとても名誉なことでしたから、国のリーダーに「オリンピックに参加するために戦争をやめてくれ」ということを言っていたのかもしれません。
現代でも、政治的に戦争状態にある国がオリンピックに参加させてもらえなかったり、自らボイコットしたりすることがありますね。
オリンピックをボイコットするような国のリーダーは、国民からの支持を大きく落としてしまう可能性があります。
今も昔も、オリンピックは平和に貢献する働きを持っていたというわけです。
オリンピックを「五輪」と呼ぶのはなぜ?
日本ではオリンピックのことを「五輪(ごりん)」と呼びますね。
オリンピックのシンボルマークは今も昔もあの「五つの輪」のマークでした。
これに日本で昔からある「五輪書(宮本武蔵が書いた兵法書です)」をかけて、オリンピックのことを「五輪」と呼ぶようになりました。
(「五輪」という表記は、1936年に登場しました)
オリンピックの記事を新聞に掲載する際に、新聞記者の川本信正氏(1907~96年)が考案したとされています。
オリンピックシンボルの「5つの輪」の意味は?
オリンピックシンボルの「5つの輪」には、「世界の5つの大陸」という意味とするのが一般的ですね。
↓※「世界の5つの大陸」とはこの5つのことです。
世界の5つの大陸とは
- ユーラシア大陸
- 南北アメリカ大陸
- アフリカ大陸
- オーストラリア大陸
- 南極大陸
なお、南極大陸は誰も住んでいませんから、南極大陸は除く代わりに「南北アメリカ」を南と北の2つに分けて「5大陸」と数えることもあります。
オリンピックの5つの輪は、上の「5つの大陸」の意味以外にも、五つの自然現象を表しているという説もあります。
↓「5つの自然現象」とは、「水の青・砂の黄色・土の黒・木の緑・火の赤」のことですね。
五輪=5つの自然現象説
- 水(青)
- 砂(黄色)
- 土(黒)
- 木(緑)
- 火(赤)
そして、上で見た宮本武蔵の「五輪書」も五輪は「地・水・火・風・空」を意味する五つの巻で構成されているのです。
こうしたことから、上で見た新聞記者の川本信正さんは近いものを感じて五輪とつけたのでしょう。
発音も「オリンピック」と「五輪(ゴリン)」とちょっと似ていますね。
当時からこの日本語訳は好評だったそうです。
オリンピックが4年に一度開催される理由は?
現代のオリンピックは「4年に1回」の開催になっています。
しかし、これは最初からそうだったわけではありません。
もともとは8年に一回行われていたのですが、「これではちょっと待っている期間が長すぎる」ということで、4年に1回という周期に変更されたのです。
また、現代では「太陽暦」という暦(こよみ)を使っていますが、古代ギリシャでは「太陰暦」も合わせて使っていました。
太陽暦の8年は、太陰暦でいうと8年と3ヶ月になります。
それを8年に合わせるために、うるう年が設けられ、なんとか8年ごとの計算になるようオリンピックを開催していたようです。
しかし、うるう年を使って3ヶ月をまとめると、季節が変わりすぎてしまうという問題があります。
(前回大会は冬だったけど、今回は夏…なんてことが起こるわけです)
これではちょっと具合が悪いだろうということで、じょじょに4年+1ヶ月、次は4年目+2ヶ月…と合わせていきました。
その後太陽暦を使うようになりましたので、キリの良い4年周期に移行していったのです。
さらに、近代オリンピックでは「4年でも長い」ということで、夏と冬の両方のオリンピックが行われています。
競技内容は夏と冬で分けられていますが、実質的には2年に1回のスパンでオリンピックが開催されていることになりますね。
古代オリンピックと近代オリンピックの違い
オリンピックには古い歴史がありますが、実はずっと継続されてきたわけではありません。
(開催されていない時期=中断時期があったということです)
オリンピックの中断時期は紀元393年〜1896年です。
この中断時期の前のオリンピックを「古代オリンピック」、再開後のオリンピックのことを「近代オリンピック」と呼んでいます。
↓まとめるとこういうことです。
古代と近代のオリンピック
- 紀元前9世紀〜西暦393年:古代オリンピック
- 西暦393年〜1896年:中断時期
- 西暦1896年〜現在:近代オリンピック
実に1500年以上もの間、オリンピックが行われていない時期があったというわけですね。
なぜこんなにも長い間オリンピックが行われなかったのか?というと、これはキリスト教の成立と関係があります。
キリスト教という宗教は「一神教の宗教」ですから、「オリュンポス十二神」のように「たくさんの神様」は認められない教えなのです。
(一神教であるキリスト教とは違って「たくさんの神様」を認める宗教のことを「多神教」といいます)
現在のヨーロッパ地域において、一時期そのほとんどを領土にしていた古代ローマ帝国というとても大きな国が存在していました。
古代ローマ帝国は392年にキリスト教を国教にしています。
一神教を国教として採用した以上、多神教のお祭りであるオリンピックは認められないというわけです。
古代ローマ帝国はその後滅びましたが、いったん失われてしまったオリンピックは19世紀になるまで復活することがありませんでした。
それから1000年以上の時を経てオリンピックを復活させようとしたのが1896年です。
この1896年以降のオリンピックのことを、近代オリンピックと呼んでいます。
第一回近代オリンピックの開催場所は、古代ギリシャの首都でもあったアテネでした。
ここから4年に1回の周期で現在まで近代オリンピックはずっと続いてきています。
古代オリンピックと近代オリンピックの開催競技の違い
古代オリンピックと近代オリンピックとでは、開催競技がかなり違います。
↓例えば、古代オリンピックではこういう競技が行われていました。
古代オリンピックで行われた競技
- ペンタスロン:短距離競走・幅跳び・円盤投げ・やり投げ・レスリングの5種目を一人の選手がこなす競技
- スタディオン:長さ約215m・幅約30mの広場内の競争
- ディアロウス競走:中距離走
- ドリコス競走:スタディオン10往復
近代オリンピックでは、ドリコス競争やペンタスロンのような競争は行われていません。
一方で、陸上の短距離走、中距離走、レスリングなどは古代オリンピックから行われている歴史ある競技となっています。
古代オリンピックと近代オリンピックの出場資格の違い
古代オリンピックと近代オリンピックでは出場資格がまったく違いました。
近代オリンピック(現在行われているオリンピック)では、競技の能力が優れていれば誰でも参加することができますね。
しかし、古代オリンピックでは、女性は出場どころか観戦すら認められていませんでした。
しかも、ギリシア国内でギリシア人の血筋を持つ男性だけが参加できたのです。
(当時、ギリシア人の血筋を持つ人は世界中に散らばって存在していました)
上で、古代オリンピックはオリュンポス十二神にささげるお祭りだということを説明しましたね。
そして、このオリュンポス十二神の中でもっとも偉い「ゼウス」は男性の神様でした。
こうした由来もあって、古代オリンピックではギリシアの血を引く男性のみが参加できるルールになっていたのです。
また、競技に参加する人は全裸が義務付けられていましたから、女性は見物さえも許されていませんでした。
第2回のオリンピックからは女性向け競技も行われた
しかし、こうしたルールは当時から不評だったそうで、オリンピック第2回目からは、女性も参加できる種目が作られたそうです。
なお、古代オリンピックではそもそも「競技に勝つ」というよりも、「神様を喜ばせる」ことが目的とされていました。
つまり、宗教的な行事という意味合いが強かったのです。
当時の神様はギリシアの神殿に住んでいるとされていましたから、世界各地を開催拠点にするようなこともありませんでした。
古代オリンピックの開催地は常にギリシアの都市オリンピュアだったのです。
まとめ
今回は、オリンピックの語源や由来について解説いたしました。
もともとは「オリュンポス十二神」にささげるための宗教的な行事だったということがお分かりいただけたでしょうか。
当時からオリンピック開催中は、参加したければ戦争は休戦しないといけないというルールになっていたことは不思議な感じがしますね。
長い歴史のあるオリンピックが、2020年にはギリシアからはるか遠い日本(東京)で行われます。
由来や歴史を知っていると、オリンピックをより楽しむことができますね。