「ブルータスお前もか」という言葉の意味をわかりやすく簡単に説明すると、「自分の忠実な部下だと思っていた人が、自分を裏切った」というような状況で使われる言葉といえます。
「まさかお前が裏切るなんて…」というようなニュアンスですね。
この言葉のもともとの由来は、古代ローマ時代(今から2000年以上前のヨーロッパの時代ですね)の最高権力者だったジュリアス・シーザーという人物が、自分の部下としてかわいがっていた青年ブルータスに暗殺されたときにつぶやいた言葉といわれています。
この記事では、「ブルータスお前もか」の言葉の由来となったシーザー暗殺の場面や、ブルータスという人物は2人いたという話について簡単にわかりやすく紹介しましょう。
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「ブルータスお前もか」の類義語
ブルータスお前もかという言葉の意味について、おおまかには上で説明した通りですが、もう少し理解を深めるために、類義語(同じ意味)として使われる言葉を知っておきましょう。
ブルータスお前もかの類義語としては、次のような言葉があります。
ブルータスお前もかの類義語
- 飼い犬に手をかまれる
- 寝首をかかれる
- あと足で砂をかける
- 恩をあだで返される
ごく大まかにいうと、側近や部下にそむかれる、反乱を起こされるような状況といえるでしょう。
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「ブルータスお前もか」を使った例文
ブルータスお前もかという言葉を使った例文としては、次のようなものが考えられます。
ブルータスお前もかを使った例文
- 田中部長が左遷されたのは、新人の頃にかわいがっていた鈴木君の内部告発が原因らしい。田中部長は「ブルータスお前もか」という気分だったと思うよ。
上の例文では田中部長からみて鈴木君は「かわいがっていた部下」なのですが、その部下に反乱を起こされた状況を、シーザーがブルータスに暗殺された状況になぞらえているというわけですね。
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太宰治の「走れメロス」に出てた言葉?
ネット上の質問サイトなどを見ると、「ブルータスお前もか」に関して「走れメロスにも同じような言葉があったような…」と思われる方がなぜか多いようです。
しかし、残念ながら走れメロスにはそういう言葉はありません。
実際に「ブルータスお前もか」という言葉が生まれた古代ローマ時代と、走れメロスの時代背景がよく似ていることもあって、混同されるケースが多いのかもしれませんね
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「ブルータスお前もか」への返答(返し)は?
シーザーが「ブルータスお前もか」とつぶやいたのに対して、つぶやかれた相手のブルータスはどう返答したのか?ですが、これは情報が何もないというのが実際のところです。
というのも、シーザーが暗殺されたのは古代ローマ時代の紀元前44年です。
今から2000年以上も昔の話ですから、正確な情報はないというのがむしろ自然かもしれませんね。
そもそも、この「ブルータスお前もか」というセリフは、シーザーが暗殺された時点から見てはるかに後年に活躍した、シェイクスピアの創作という説もあります。
↓※シェイクスピアの作品名は「ジュリアス・シーザー」で、青年ブルータスを主人公として描かれた作品です。
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シーザーってどんな人?何がすごい?
上でも見たように、「ブルータスお前もか」という言葉は、古代ローマ時代の独裁者であるジュリアス・シーザーという人物が暗殺されるときに残した言葉です。
※ジュリアス・シーザーという読み方は英語読みの発音なので、ラテン語風に読んで「ユリウス・カエサル」という風に発音されることもあります。
古代ローマ時代というのは今から2000年以上も前の時代です。
自分が死ぬときに残した言葉が2000年もあとになっても世界の人々に記憶されているなんてすごいことですよね。
以下では、シーザー(カエサル)という人物がどれぐらいすごい人だったのか?について簡単に解説させていただきます。
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イタリアの教科書では「歴史上最高の英雄」という扱い
シーザーは、今のイタリアにあるローマという地域で生まれました。
現在もイタリアの人々は、このシーザーという人物を非常に尊敬していて、「好きな歴史上の人物は?」と聞けばほぼ上位に来る人物なのです。
日本でいえば織田信長みたいな扱いの人物といえるでしょう。
例えば、イタリアの中学校の教科書では次のような記述があります(塩野七生さんの「ローマ人の物語」で紹介されています)
指導者には次の5つの資質がなくてはならない。
①知力・②説得力・③肉体上の耐久力・④自己制御の能力・⑤持続する意思。
カエサル(シーザー)だけが、このすべてを持っていたのだ。
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シーザーって、実際には何をした人?
歴史上、シーザーという人物は、具体的にどういう功績を残した人なのか?についてですが、ひとことでいうと「当時のローマで最初の皇帝になった人」ということになるでしょう。
ローマというと今の感覚では「イタリアという国の1つの都市」というイメージしかありませんが、当時の古代ローマというのは、今でいう「ヨーロッパ全部+エジプト+トルコ」ぐらいの範囲の超巨大国家です。
※↓古代ローマが拡大していく様子:範囲でいうとこれぐらい(ウィキペディアより画像借りました)
その超巨大国家でたった1人の独裁者になった人物ですから、政治リーダーとして非常に優れていたのでしょうね。
なお、ここでいう「皇帝」というのは「実質的な最高権力者」という意味で、正式に皇帝という称号を得たのはシーザーの養子のアウグストゥスが最初です。
シーザーは最高権力者として権力の絶頂を迎えたときに暗殺される(そのときに残した言葉が「ブルータスお前もか」です)という劇的な生涯を送った人物ですから、その暗殺の瞬間の言葉というのも鮮烈なイメージが残っているのでしょう。
だからこそ「ブルータスお前もか」という言葉が2000年以上も後の今でも慣用句として定着しているということなのかもしれません。
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シーザーのその他の業績
上ではシーザーの業績は「当時のローマで最初の皇帝になった人」という風に説明しましたが、その他にもシーザーはたくさんの業績を残しています。
あまり細かく書いてもわかりづらくなるかと思いますので、一覧で紹介すると以下のような感じですね。
シーザー(=カエサル)の業績
- ガリア(北部イタリア)を制圧
- ブリタニア(現在のイギリス)に侵攻
- ゲルマニア(現在のドイツやポーランド地域)に侵攻
- 元老院議員を600人から900人に大幅拡充
- 法律制度の改革をものすごくたくさん行う(造幣所の開設や利息率の上限設定、解放奴隷の公職への登用や地方議会での被選挙権のルール改定その他たくさん
- エジプトを制圧
- ヒスパニア(現在のスペイン)を制圧
- 北アフリカを制圧
- ローマの終身独裁官(実質的には皇帝)に就任
- ガリア戦記・内乱記などの数々の文芸作品の名著を残した(特にガリア戦記は記録文学として史上最高の作品と言われています)
- シリア地方の制圧に向かおうとした直前に暗殺される
エジプトやヒスパニア、北アフリカについてはシーザー以前にとったりとられたりを繰り返した地域でやや微妙なところはありますが、おおむね上のような感じでしょうか。
軍事的な功績だけでなく、政治的にも文学的にも非常に優れた功績を遺した人物であり、まさしく「万能型の天才」であったことがうかがえます。
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シーザーが残した数々の名言
シーザーは「ブルータスお前もか」の他にも、数々の名言を残した人物として知られています。
彼は上でも見たように「ガリア戦記」「内乱記」といったすぐれた文学作品を残した人物ですから、ワーディングセンス(言葉を選ぶ感覚)も抜群な人物だったのでしょう。
シーザーが残した名言としては、次のようなものが有名です。
シーザーが残した名言や逸話
- ブルータスお前もか:暗殺されるとき
- ルビコン川を渡る:くわしくはこちらの記事
- 賽(さい)は投げられた:ルビコン川を渡り、内乱を開始したときのセリフ
- 来た、見た、勝った(エジプトを制圧した時の元老院への報告文書)
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軍事・政治・文芸…どれをとっても「才能満点」の人物
軍事的な功績については上のほとんどのケースで「少ない軍隊で、数の多い相手に勝つ」というような劇的な勝利の仕方をしており、軍事上の才能でも非常に優れた人物だったといえます。
政治的な才能でも、数々の重要な法律を制定しただけでなく、ポンペイウスやカトーといったシーザー以前の政治スターたちを次々と失脚させ、終身独裁官として完全勝利します。
最終的には暗殺という形で殺されてしまいますが、逆に言うと、暗殺という暴力的な手段以外にシーザーの勢いを止めることができなかったということもいえるかもしれませんね。
文学の才能でも、彼が自らが総司令官として戦った戦争を明晰な文章で記した「ガリア戦記」「内乱記」などの数々の名作を残しています(ガリア戦記は散文のラテン語文学で史上最高の作品と言われます)
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シーザーは、女にも男にもモテまくった人物
また、人物的にも非常に魅力的で、部下からも父親のようにしたわれ、見た目はそんなに良くなかったにもかかわらず女性にも非常にモテた人物だったようです。
このような「どこをとっても完全無欠な人物」がシーザーなわけですが、ものすごくおおざっぱにいうと、「広大な古代ローマの勢力圏を戦争でさらに大幅に広くし、国内のライバルたちも全員やっつけて、権力の頂点を極めた瞬間に暗殺されてしまったという劇的な人物」ということができるでしょう。
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「ブルータスお前もか」のブルータスは2人いた?
シーザーを暗殺した「ブルータス」という人物は、実は2人いたことが分かっています。
マルクス・ブルータスと、デキムス・ブルータスの2人です。
「ブルータスお前もか」のブルータスはどっち?
- ①マルクス・ブルータス
- ②デキムス・ブルータス
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シーザーの暗殺場面にこの2人のブルータスの両方がいたことは明らかになっています。
一方で、シーザーが「ブルータスお前もか」とつぶやいた相手の「ブルータス」がこの2人のうちどちらなのか?については意見が分かれています。
歴史上の人物という意味では圧倒的にデキムスよりもマルクスの方が有名なのですが、シーザーに「ブルータスお前もか」とつぶやかれた相手は、実はデキムスの方だったという説が有力です。
以下、2人のブルータスがどういう人物だったのか?について簡単に説明させていただきます。
①マルクス・ブルータス
マルクス・ブルータスはシーザーの愛人の息子です(シーザーの実の息子ではありません)
シーザーという人はものすごく女性にもてる男で、たくさんの愛人がいたといわれている人物です。
たくさんいたシーザーの愛人の中で、「生涯の愛人」といわれたのがこのマルクス・ブルータスの母親といわれています。
生涯愛した女性の実の息子ですから、シーザーはいろんな場面でマルクス・ブルータスを引き立ててきたのでした。
それにもかかわらず、マルクス・ブルータスはシーザー暗殺の実質的なリーダーとして活動し、最終的には暗殺の実行犯に加わることになります。
なお、上でも紹介したシェイクスピア作の『ジュリアス・シーザー』の主人公はこのマルクス・ブルータスです。
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歴史上の人物として有名なのはマルクス・ブルータス
マルクス・ブルータスはシーザー暗殺後の政治状況で非常に大きな役割を演じた人ですから、次のデキムス・ブルータスよりも知名度では圧倒的に勝っています。
シーザーが暗殺された後の政治状況について、ごく簡単に説明させていただきます。
シーザーは終身独裁官(実質的には皇帝)として古代ローマの最高権力者だった人物ですから、彼が暗殺された後には当然後継者争いが起きます。
具体的には、①暗殺のリーダーだったブルータス、②シーザーの養子アウグストゥス(シーザーが亡くなった当時の名前はオクタヴィアヌス)、③シーザーの右腕的な部下だったアントニウス、の3人が争うことになります。
最終的にはこのうち②のアウグストゥスが勝利し、シーザーの跡を継ぐ初代ローマ皇帝として政治の実権をにぎることになります。
アウグストゥス以降、ローマは共和制から帝政に移行し、数々のローマ皇帝の物語が生まれることになります。
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②デキムス・ブルータス
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歴史上はやや影が薄いですが、「ブルータスお前もか」のブルータスであるという説が有力なのが、このデキムス・ブルータスです。
デキムス・ブルータスはシーザーの遠縁にあたり、軍事上の才能で優れた人物でした。
シーザーが司令官として従軍した戦争では部隊長として大活躍する様子が「ガリア戦記」などに描かれています(ガリア戦記はシーザー自身が書いた書籍です)
シーザーに遺言で第2相続人に指定されていたデキムス・ブルータス
さらに、シーザーが残した遺言によると、このデキムス・ブルータスは第2相続人として指定されているほどに愛された人物でした。
(ちなみに、第1相続人として指定されていたのがシーザーの後を継いで初代ローマ皇帝となるアウグストゥスです)
それほどまでにシーザーに愛されながら、デキムス・ブルータスはシーザーの暗殺に実行犯として参加します。
ガリア戦記での描かれ方や、相続人に指定されているなどの様子から、シーザーはマルクス・ブルータスよりもデキムス・ブルータスの方を愛していたのは明らかです。
そのような根拠から、「ブルータスお前もか」の「ブルータス」は、デキムス・ブルータスであったとする説が実は有力なのです。
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