関西では昔から、瓦製の鍾馗像を屋根の上に置いて魔除けにする風習があります。
マンションなど集合住宅で鍾馗様を置く場合、どうしたらいいのでしょう?
今回は、歴史や由来もからめつつ、鍾馗様の置き方・飾り方について解説させていただきます。
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鍾馗様を玄関に置きたい!マンションの場合はどうする?
鍾馗様は鬼をも倒すと言われている強い神様。
「我が家はマンションで瓦屋根じゃないんだけど、鍾馗様に守ってもらいたい!玄関に置いてもいいの?」
結論から言うと問題ありません。
屋根の上で厄を払うイメージがある鍾馗様ですが、「屋根に置かないと効果がない」ということではありません。
玄関先なら、床に置くより、靴箱の上など高さのある場所に置きましょう。
玄関先でも効果あり!鬼より強い鍾馗様
昔から、魔物は通りをまっすぐ突き進んでくるもの、と信じられていたそうで、T字路の突き当りにある家の屋根にはよく、鍾馗像が置かれていました。
現在でも、京都や奈良など古い街並みが残る町屋の屋根の上には、剣を持ち、大きく目を見開いて往来ににらみを利かせる鍾馗様の像が数多く見られます。
屋根の上に置いて厄除けにするイメージが強い鍾馗様ですが、本来は、その家の住人が「ここに置いて邪気を払いたい!」と感じた場所に置くべきものなんです。
玄関の、靴箱の上など、家族の出入りの様子を見守っていただけそうな場所に置きましょう。
室内用の、小振りな鍾馗様もありますよ!
可愛らしい武者人形や掛け軸バージョンの鍾馗様も
一方、関東では、魔除け・厄除けの五月人形として、鍾馗様を室内に飾る風習が広く残っています。
同じ鍾馗様でも、地域によって飾り方・祀り方がいろいろあるのも、面白いですね。
お馴染みの、怒った顔の立派な鍾馗人形もあれば、可愛らしいお顔のタイプもあります。
久月 鍾馗人形
真多呂 鍾馗
また、掛け軸やのぼりに鍾馗像を描いて飾ることも多いです。
端午の節句の他にも、新築祝いなどにも喜ばれます。
掛軸型武者絵のぼり 鍾馗軸
魔除け・厄除けとして持ち歩くなら、鍾馗様をかたどった根付やペンダントもオススメです!
鍾馗さんペンダントトップ
町屋の屋根になぜ多い?京都の守り神「鍾馗さん」
関東でも、瓦屋根の上に鍾馗像を置いている建物、ときどき見かけますが、関西に比べると圧倒的に少ないです。
なぜ、関西では屋根に鍾馗像を置くようになったのでしょうか?
実はこんなお話が伝わっています。
江戸時代の中頃のこと。
京都のとあるお金持ちが家を建てた際に、屋根に立派な鬼瓦を置いたところ、お向かいの家の娘さんが不治の病に陥ってしまいました。
鬼瓦によって払われた厄が、お向かいの家にはね返ってきて、その娘さんは夜ごと鬼の夢にうなされ、寝込んでしまったのです。
そこで、鬼瓦に対抗して、鬼より強いと伝わる鍾馗様の像を瓦で造って屋根に置いたところ、なんと娘さんの病が完治!
そんなことがあってから、京都の町屋では、屋根に瓦製の鍾馗像を置く家が増えていったのです。
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鍾馗様の正体とは?なぜ厄除けの神様?
鍾馗様の由来には諸説あるようですが、1300年以上前の中国にいた実在の人物、という説が有力です。
いったいどんな神様なのでしょう?
鬼より強い鍾馗様の歴史を紐解いてみましょう!
病床の皇帝を救った!?夢の中で鬼を退治した青年鍾馗
今から1300年ほど前、中国の唐という国に、玄宗という皇帝がいました。
あるとき、玄宗は病にかかり、高熱と悪夢にうなされるようになってしまいます。
鬼が悪さをして人々を苦しめる夢。
そんな夢の中に、鬼たちを退治する大鬼が現れたのです。
玄宗が大鬼に名を訪ねると、大鬼はその昔、宮廷に使える役人をしていた鍾馗という青年で、科挙(中国に古くからある官僚登用試験)に落ちたことを恥じて自殺してしまったということ。
しかし、時の皇帝が自分を手厚く葬ってくれたことに報いるため、鬼を退治しにやってきたというのです。
夢から覚めた玄宗の高熱はすっかり治まっていました。
それ以後、夢の中で皇帝を守った鍾馗を、神様として祀ることになったのです。
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厄除けの神様となった鍾馗様~始めは「絵」だった?
玄宗は自分の病気が治ったことに深く感銘し、呉道玄(ごどうげん)という有名な画家を呼び寄せて、夢の中に出てきた鍾馗の絵を描かせます。
呉道玄が描いた鍾馗の絵は、玄宗が夢で見た姿にそっくり!
玄宗はその絵を、城門の上に掲げて魔除けとしたのです。
このお話が史実かどうかは定かではありませんが、実際、玄宗皇帝の時代には、鍾馗の絵を魔除け・厄除けとして門に貼るという風習がありました。
当初は、新年に門に貼っていたようですが、それが何百年と経つうちに、端午の厄除けとしても、鍾馗の絵を各家々で飾るようになっていったのです。
1300年もの長い年月、人々を見守り、人々に愛され続けてきた守り神。
鍾馗様とは、そんな神様なのです。
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鍾馗様海を渡る~日本に伝わって来たのはいつ頃?
もともとは中国の神様として祀られていた鍾馗様。
魔除け・厄除けのお話は徐々に広まっていき、東アジア周辺でも鍾馗様を祀るようになっていきました。
日本に渡ってきた時期は定かではありませんが、室町時代にはすでに、鍾馗様を題材とした絵が多く描かれています。
本田忠勝や前田利家など、鍾馗様を旗印や陣羽織に描いて愛用した戦国武将も。
そして江戸時代。
関東では端午の節句に飾って子供たちを守る武者人形や掛け軸に。
関西では家を守る魔除け・厄除けの神として瓦屋根の上に置かれる瓦像として。
鍾馗様は長い間、さりげなく、でも力強く、人々の暮らしを見守り続けてきたのです。
まとめ
鍾馗様とは、中国唐王朝時代、玄宗皇帝を悪夢から救ったとされる強い神様。
屋根の上に置くのがしきたりやマナーなのかな?と思いきや、歴史を紐解いてみると、そういうわけでもないんですね。
「鍾馗様をどこにどう置くか」というこよとり、「鍾馗様を大事にすること・日々感謝の気持ちをあらわすこと」が大切なのです。
瓦屋根の上でなくても、マンションの玄関でも、鍾馗様はきっと、子供たちのこと、家のこと、しっかり守ってくれるでしょう。
お節句のお祝いのときに、是非、鍾馗様のお話を子供たちにもしてあげてくださいね!
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