税理士を目指す方、あるいはすでに税理士資格を取得していて会計事務所等で勤務税理士として働いている人の多くが「将来は独立して自分の事務所を持つ」ということを目標にされていると思います。
独立して自分で自由な時間に働き、自分の報酬額は自分で決める…サラリーマンにとっては永遠の夢ですよね。
ただし、近年では税理士業界といえども独立して成功するには難易度が高くなっているということを理解しておく必要があります。
私は、専門職の方の転職支援という仕事をしている関係で、勤務税理士から独立開業の税理士になったとたんに生活がより苦しくなってしまった…という人をたくさん見てきました。
安定した給料がある勤務税理士からリスク背負って独立したのに、かえって貧乏になってしまった…では目も当てられません。
ここでは独立開業した税理士のおよそ3割が、総所得金額300万円以下というちょっとショッキングなデータについて解説させていただきます(節税対策の結果としてもこれはちょっと少なすぎますよね…)
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日本税理士会による開業税理士の年収データ
日本税理士連合会が平成26年にとりまとめた「第6回税理士実態調査報告書」では、開業税理士の31.4%(アンケートに回答した開業税理士2万4950人中、7843人)が「総所得金額は300万円以下」という回答をしているのが現実なのです。
※勤務税理士と開業税理士の年収の比較(詳細なソースデータあり)についてはこちらの記事を参考にしてみてください↓
勤務税理士の平均所得はおよそ550万円ですから、独立したことによって大幅に手取りが少なくなってしまっている税理士が少なくないことが予想されます。
現在、独立開業を目指している勤務税理士の方が、そのような不利な立場に置かれてしまわないよう、事前に検討しておくべき課題について考えてみましょう。
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税理士の独立が難しくなっている2つの要因
税理士が独立して成功する(つまり年収を増やすこと)のが難しくなっている要因としては大きく分けて次の2つあると思われます。
- ①会計ソフト普及による見込み客の絶対数減少
- ②中堅〜大手税理士法人の増加による寡占化
税理士として現役で働いている方たちからすると「何を今さら」な内容かもしれませんが、以下で順番に解説させていただきます。
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①会計ソフトの進化による見込み客の減少
ひと昔前までであれば、単純な経理の記帳代行業務をアウトソーシングであっても、一定数の需要が見込めたのは事実です。
個人事業主〜中小零細レベルの法人顧客を見込み客としてターゲットにしているだけでも、開業税理士の利益確保十分にできていました。
しかし、近年では会計ソフトも低価格が進んでおり、会計freeeなどのクラウド型の会計ソフトを使えば月額1000円程度〜で経理業務を自社内で処理できるようになっています。
日常的な会計業務は税理士に外注せず自社内で行い、万が一税務調査が入ったとしても大きな修正は発生しないので必要があれば修正する…というような形でもリスクは最低限になっているというのが実際のところなのです。
単純な経理業務のアウトソーシングの受け皿、という開業税理士のビジネスモデルはすでに破綻し始めているといえます。
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②中堅〜大手税理士法人の増加による寡占化
近年では税理士、弁護士といった士業ビジネスでは、ネット上で見込み客を集客するということが一般的になっています。
見込み客が税理士を探すときの最初のアクションが、これまでは知人からの紹介に頼っていたのがウェブ検索へとシフトしているということでもあります(実際、あなたも何か生活で困ったことがあって、専門家を探そうと思った時にはまずネットで調べますよね)
開業税理士がネットで顧客を集客している事例
試しに「税理士 東京」「相続税申告 税理士」といったような「いかにも意欲の高い見込み客が入力しそうな検索キーワード」でグーグルやヤフー検索をしてみてください。
資産税に力を入れている開業税理士や、中堅〜大手税理士法人のウェブサイトが検索の一番上に表示されていると思います。
理由は簡単で、こうした検索キーワードで検索した結果の画面に自社のウェブサイトを表示させることができれば、圧倒的に多くの見込み客を集客することができるからです。
どうやって見込み客を集めるか?
実際にウェブサイトを作った経験のある方であればわかると思いますが、こういった「購買意欲満々のキーワード」でグーグルやヤフー検索の上位に自分のサイトを持っていくには大変な労力がかかります。
労力をかけてサイトコンテンツを作り込むか、グーグルやヤフーに広告料を支払うかのどちらかをしないと、自分のサイトを検索上位に表示するということはできません。
つまり、見込み客の多くがウェブ上で検索行動を行なっているのにもかかわらず、そうした見込み客にリーチするためのコストは増大しているというのが税理士業界(あるいは士業ビジネス)の実情なのです。
ウェブ集客のコストは拡大している
グーグルやヤフーの検索結果という「おいしい集客場所」には誰もが自分のウェブサイトを表示したいと思うのが自然ですから、必然的にウェブサイトの作成合戦となります。
グーグルやヤフーとしても広告枠を設けて「お金を払ってくれればここにあなたのサイトを表示しますよ」という形で広告料収入ビジネスを行なっていますから、資金力のある税理士法人はこぞって資金を投下して自社のサイトを検索上位に表示しています。
そうなると、まだ資金力やウェブ上での集客ノウハウがとぼしい開業税理士では思うように見込み客を集客できないということになりますし、中堅〜大手規模の税理士法人と対等の立場で競争していかないといけなくなっている…というのが実情なのです。
独立するなら集客は最重要課題
税理士とはいえビジネスですから、集客がうまくいかなければ顧問先を増やしていくことができません。
こうした集客の現状やハードルの高さを認識せずに独立開業しても、思うように顧問先を獲得できず、結果として勤務税理士をやっていたときよりも貧乏になってしまう…というケースがあとをたたないのです。
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税理士が独立して貧乏にならないためにはどうしたらいい?
それではどうしたらいいのか?ですが、解決のヒントはすでにうまくいっている独立開業税理士のビジネスへの取り組み方を参考にすることにあります。
彼らの多くは「ニーズの高い専門分野」を持って独立開業に至っています。
つまり、大手の税理士法人や資産税を専門とする税理士法人で数年間実務経験を積んでから、その経験を生かして需要の高いいわゆる「もうかる分野(資産税や医療会計など)」に挑戦していくというのが、独立しても貧乏にならない税理士の典型的なパターンなのです。
「何でも屋さん」な税理士になってはならない
税理士も「何でも屋さん」や「単純な経理作業の代行」では誰にも勝てない状態になってきています。
従業員数人程度の小規模な会計事務所での実務経験しかない…という状態でいきなり独立してしまうと、上で見た「総所得金額300万円以下(開業税理士全体の31%もいる…)
」となってしまう可能性が高くなるでしょう。
税理士として儲かる専門分野を持つには?
税理士としての希少価値が高い専門分野を身につけるためには、大手税理士法人や外資系の税理士法人、資産税特化の中堅税理士法人などで実務経験を積むことがおすすめです。
現在、会計事務所に3年以上勤めていて、税理士資格も取得しているという方であれば、こうした大手税理士法人への転職に成功する余地は大いにあります。
どんな人が大手税理士法人に採用される?
外資系の場合は英語がネック…という方も多いかもしれませんが、TOEIC600点程度でも採用されるケースは多くありますから、厳しい税理士試験の勉強に耐えた経験のある人であればハードルは低いと言えるでしょう。
これらの税理士法人、会計事務所では年収も600万円〜700万円スタートという高待遇の求人も多くありますから、数年間はレベルの高い実務経験を積みつつ独立のための資金を貯めるというキャリアプランも検討してみる価値はあります。
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