「家のまわりにはいろんなお店があるのに、行くのはいつも決まって同じ大衆食堂…」
こんなとき、私たちの心理では「現状維持バイアス」というはたらきが生じている可能性が高いです。
現状維持バイアスとは、行動経済学という学問分野で研究されている人間の心理状態のことで、企業のマーケティングや恋愛テクニックに応用されることも少なくないんですよ。
この記事では、現状維持バイアスの意味や例文、外し方の具体的なテクニックについてくわしく説明しますので、参考にしてみてくださいね。
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現状維持バイアスとは?
現状維持バイアスとは、ごく簡単にいうと「現在の状態からの変化を避けようとするこ脳の働きのこと」で、行動経済学や社会心理学の用語として使われます。
人には現状がすごく嫌でない限り、現状からの変化をあまり好まない傾向があります。
冒頭でも少し見ましたが、普段の生活で「なんとなく変えなきゃなあ…」と思っていても、なんとなくいつもと同じ選択をしてしまうことってありますよね。
これは、実は人間の本能から言ってとても自然なことなのです。
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古代の人間にとって現状維持バイアスは命を守るための自然な反応だった
古代の人間にとって、「新しい挑戦」をすることは命の危険がともなうことでした。
例えば、今住んでいるところから離れて新天地を探すことは食料を得られなくなるかもしれませんし、危険な動物に出会う可能性もあります。
もし人間の脳が「新しい挑戦をする」ことをどんどん認める仕組みになっていたとしたら、かなり昔に絶滅してしまっていた可能性もあるでしょう。
私たちが日常生活で新しい挑戦をするのに抵抗感を感じるのは、このような「自分の身と命を守る」という本能のなごりというわけですね。
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現代社会では現状維持バイアスがマイナスに働くこともある
ただし、現代の社会においては、新しい挑戦をせずにこれまで通りの選択をし続けることがマイナスに働くことも少なくありません。
例えば、ビジネスの場ではどんどん新しい挑戦をしていく企業でないと世の中の流れから取り残されてしまいますし、転職や起業といった新しいチャレンジが人生を劇的に向上させるというシーンもあるでしょう。
サルから進化した私たち現代人は、脳の自然な本能によるはたらきを時には否定し、理性によってコントロールすることが求められる場合もあるということですね。
次の項目では、現状維持バイアスの外し方のテクニックについて紹介しましょう。
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現状維持バイアスの外し方
現状維持バイアスは、ある選択をすることによるメリットとデメリットをより正確に計算することで、外すことができます。
メリットとデメリットを正確に認識する前段階として、その行動をとるときの「目的」が何かを考えましょう。
現状維持バイアスをはずすための2つのステップ
- ①行動の目的を考え、重要視する項目を決める
- ②行動の結果として得られるメリットとデメリットに点数をつける
目的がはっきりしないことには、メリットとデメリットを正しく知ることができないためです。
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現状維持バイアスの外し方①:行動の目的を考え、重要視する項目を決める
例えば、あなたが転職をするべきか、今の職場にとどまるべきかで迷っているとします。
もし自然な本能に任せて判断するとすると、現状維持バイアスがはたらきます。
そうすると結局は「いろいろ嫌なこともあるけど、今の職場も絶対に嫌だというわけではないから、現状維持でいいか…」という判断になりがちです。
現状維持バイアスを外して判断をするためには、「転職をするべきか否か」を考える目的をはっきりさせ、自分がもっとも重要だと考えていることはなんなのか?を明確にしましょう。
転職の目的は収入アップ・プライベートとのバランスをとる・自分のやりたい仕事をする・人間関係の変化…など、いろいろありますね。
それらの中であなたがもっとも重要視する目的はなんなのか?を考えます。
例えば、ここでは収入をアップさせることをもっとも重要な目的と考えたとしましょう。
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現状維持バイアスの外し方②:行動の結果として得られるメリットとデメリットに点数をつける
重要視する目的が決まったら、転職という行動をとった結果として得られるメリットとデメリットにポイント(点数)をつけていきます。
メリットにはプラスの点数、デメリットにはマイナスの点数ですね。
この例では収入アップを転職の最重要目的としていますから、収入に関するメリットやデメリットには大きな点数をつけるというわけです。
収入アップが見込める転職の案件が見つかった時に、メリットとしては収入アップ、デメリットとしては人間関係を新しく始める必要がある・仕事が忙しくなってプライベートの充実度が減る…といったことがあるかもしれません。
例えば、以下のように点数をつけたとします。
「収入アップ」を最重要視してメリット・デメリットに点数を付けた場合
- 収入がアップする:+10点
- 人間関係の変化 :-3点
- 仕事が忙しくなる:-4点
合計:+3点→「転職する」という選択へ
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一方で、「人間関係」をもっとも重要な項目として点数をつける人もいるかもしれません。
その場合には、次のように点数をつけることになるでしょう。
「人間関係」を最重要視してメリット・デメリットに点数を付けた場合
- 収入がアップする:+5点
- 人間関係の変化 :-10点
- 仕事が忙しくなる:-1点
合計:-6点→「転職はしない」という選択へ
人それぞれ、行動の結果として得られるメリットやデメリットにつける点数が違うので、それぞれ異なる行動を選択する可能性があるというわけですね。
自分という人間の判断基準や価値基準をよく知り、ある行動から得られることがらについて、「自分は何点をつけるのか?」をはっきりさせることが現状維持バイアスを上手にはずすポイントといえるでしょう。
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現状維持バイアスの事例
現状維持バイアスは、どんな些細なことでも、現状から変化がある時はかなり高確率で起こっています。
実はあれも現状維持バイアスだったのかも...と思うこと意外とたくさんあります。
この記事では転職、英語、恋愛の3つの場面での現状維持バイアスをご紹介します。
転職での現状維持バイアスの例
転職のように、人生において重要度の高い選択は、ミスによるデメリットが非常に大きいため、現状維持バイアスも非常に強く働きやすいと言われています。
転職を考えている人は、無意識のうちに、所得アップなどの利益と、新しい環境への順応などの苦労を予測・比較します。
その時、現状維持バイアスが働き、苦労をより大きく評価してしまうと、「なんとなく」転職に踏み切れなくなってしまうのです。
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英語の勉強を始めることについての現状維持バイアスの例
デメリットが分かりやすい選択をする時は、現状維持バイアスが起こりやすくなります。
時間制約とコストなど、デメリットが分かりやすい選択は、特に現状維持バイアスが働きやすいのです。
そして人は習いたい気持ちと、現状維持バイアスに挟まれてしまいます。
結果、「今じゃなくて良いかな」、「もっといい機会が訪れるはず」と先延ばしにしてしまうのです。
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恋愛での現状維持バイアスの例
恋愛では、男女が古い関係から新しい関係に発展する時、特に現状維持バイアスが起こりやすくなります。
例えば、今まで友達だったけど、恋人関係になりたい時
例えば、恋人関係だっけど、ただの友達に戻りたい時など
古い関係と新しい関係のメリットとデメリットを比較して、現状維持バイアスが働くと、なかなか現状を変えるという選択が難しくなってしまうのです。
「新しい関係もいいけど、今じゃなくても良いかな...」と。
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マーケティングにおける現状維持バイアス
マーケティングでは、現状維持バイアスを防ぐために返金保証制度を活用します。
何かを購入する時、人は購入後のメリットとコストなどデメリットを予想・比較します。
現状維持バイアスはデメリットを過大評価させるため、「メリットがコストに見合わなかったらどうしよう」と考えさせ、購入意欲を阻害してしまします。
このため、現状維持バイアスを起こさないようにするものこそ、返金保証制度です。
いつでも変化する前の現状に戻れるという安心感が購入意欲を高めます。
最近は使用済みでも返金してもらえるものもあり、安心して購入できますよね。
でも儲けがあるのか心配になってしまいます。
ここで登場するのが保有効果です。
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返金制度を使わせない保有効果
保有効果とは一度手に入れたものは実際以上に価値を見出してしまうという効果です。
つまり一度購入した人は、保有効果によって、一度手に入れたものを手放しづらくなってしまうのです。
だから返金が保証されていても、実際に制度を利用する人はほとんどいないそうです。
プロスペクト理論と損失回避性
現状維持バイアスのメカニズムで最も重要なのがプロスペクト理論と損失回避性という考え方でです。
プロスペクト理論とは利益による喜びよりも損失による悲しみの方が大きいことを明らかにした理論です。
このため、人には利益の獲得よりも損失の回避を優先する傾向があると言われています。
これが損失回避性です。
現状から変化するということは、「現状から良くなる」と「現状から悪くなる」の2種類の可能性があります。
損失回避が起こり、「現状から悪くなる」を回避する方を優先すると、現状からの変化ができなくなり、現状維持バイアスとなるのです。
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現状維持バイアスが起こりやすい状況
現状維持バイアスが起こりやすい状況はメリットとデメリットを正確に計算できない時だと言われています
人は未来のことに対して、予想を立てます。
この予想が不確実であればあるほど、強い現状維持バイアスが起こる状況と言えるでしょう。
まとめ
今回は現状維持バイアスについて解説しました。
一見難しそうな単語ですが、実はとっても身近で、生活に役立つ知識だったんです。
「なんとなく」挑戦できない心理を克服したい方は、ぜひ参考にしてみて下さいね。
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