東京都自治の小池百合子さんが「今までの議論をアウフヘーベンして…」と記者会見で述べたのを聞いて「アウフヘーベン?なんだそれ?」と疑問に思われた方も多いかもしれません。
アウフヘーベンとは哲学の用語で、ごく簡単にいうと「今までの意見をぜんぶひっくるめるような、新しい視点から見ましょう」ということを意味します。
この記事では、アウフヘーベンの例についてわかりやすく具体的に説明しますので、参考にしてみてください。
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アウフヘーベンの例
上でも少し説明しましたが、アウフヘーベンとは、「対立する2つの主張があったとしても、新しい別の視点から見ると、これら2つの主張は実は対立していないんだ」と考えることをいいます。
例えば、次のような具体例がわかりやすいと思います。
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①まず、対立する2つの主張があると考える
まずは、Aさんは「~は~である」と主張し、Bさんは「~は~でない」と主張している状況を考えます。
ちなみに、このような場合の「主張」のことを哲学用語では「テーゼ」と呼ぶことがあります。
例えば、次のような例で考えましょう。
対立する2つの主張
積み木がひとつあります。
それを見たA君は「この積み木は三角だ」と言いました。
同じ積み木を見たB君が「この積み木は丸だよ」と、全然ちがうことを言いました。
A君もB君もウソをついていないようです。
ちなみに、ある1つの主張(テーゼ)に対して、それと両立しない主張のことをアンチテーゼと呼びます。
ここではA君のテーゼはB君のテーゼと両立しませんから、A君の側からみるとB君の主張はアンチテーゼということになります。
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②次に、2つの主張を成り立たせるような新しい視点を考える
アウフヘーベンとは、上のような「対立する2つの主張があるときに、新しい視点で見たら実は両方とも成り立つ」という状況を生み出すことをいいます。
上の例でいえば、A君とB君のどちらが正しいのか?ではなく、どちらの言い分も正しくなるような積み木の形を考えるわけですね。
例えば、この積み木は実は「円錐形(えんすいけい)」だったと考えてみましょう(上の画像:これが新しい視点から考えるということです)
円錐形は、工事現場などにある三角コーンの形のことですね。
この円錐形は、横から見ると三角形で、底から見ると丸という形に見えるでしょう。
積み木は「三角」であり「丸」でもあるわけですから、A君・B君の両方の言い分が成立します。
このように、テーゼ(三角)とアンチテーゼ(丸)という一見対立する言い分を両方成立させたテーゼ(円錐形)をジンテーゼといいます。
このジンテーゼ(新しい視点から見た主張)を導き出すための作業が、アウフヘーベンするという言葉の意味になるわけです。
例えば、「A君の主張とB君の主張をアウフヘーベンすると、このような主張が考えられる」というような言い方をします。
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アウフヘーベンの意味とは?具体的にわかりやすく説明!
上で見た例について、もう少し難しい言葉でまとめると以下のようになります。
上記の「円錐形」の具体例のように、テーゼVSアンチテーゼという構図に対して、どちらも否定しない、より高次元の考え:ジンテーゼを導き出す一連流れをアウフヘーベン(止揚)といいます。
ここではさらに、アウフヘーベンの意味をもう少し詳しく説明していきます。
アウフヘーベンの簡単な説明
アウフヘーベンというのはすごく簡単に言うと「トンチ」です。
一休さんの物語では、「このはし渡るべからず」という注意書きが書かれた橋を前にして、「端(はし)」ではなく「(橋の)真ん中を渡る」というトンチが登場します。
これこそ「はしを渡らない」と「はしを渡る」という対立するテーゼを、「端」と「橋」という解釈の「アウフヘーベン」によって解決しています。
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アウフヘーベンと弁証法
ここまで説明したアウフヘーベンという考え方は、ヘーゲルという有名なドイツの哲学者が、弁証法という考え方を提唱する中で主張したものです。
アウフヘーベンは日本語で「止揚」と訳されますが、この言葉は、「否定する(捨てる)」という意味と「高める(保存する)」という意味の、二つの言葉が合成されてできています。
「対立する2つの主張をいったん止め、より高い次元に揚げて、新しい主張を導き出す」というようにイメージすると言葉の意味が分かりやすくなるかもしれませんね。
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まとめ
アウフヘーベンの意味自体はシンプルですが、問題解決の手段としてはとても重要な考え方だと言われています。
それは世のなかの白黒つかない問題に対して、妥協(グレー)ではない「さらなる発展的な解決策」を見出すことができるからです。
このアウフヘーベンという言葉は東京都知事の小池百合子さんが多用したことで一躍有名になりました。
みなさんもこれを機会にアウフヘーベンという言葉の意味をきちんと理解したうえで、世の中に隠れている、白でも黒でもグレーでもない「第四の可能性」を探ってみるのも楽しいのではないでしょうか。
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