「恥の多い生涯を送って来ました」
「人間失格」はこの印象的な書き出しの一文で有名な太宰治の代表作品です。
この物語の主人公の人生と太宰治自身の人生には共通部分があり、作品発刊の1か月後に太宰が自殺していることから、彼の遺作ともいわれていますね。
今回は「読んでみたいけど時間がない!」という方向けに、「人間失格」のあらすじや見どころについて、簡単にわかりやすく紹介していきたいと思います。
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「人間失格」の作品構成について
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まずは「人間失格」の作品全体がどういう仕組みで進んでいくのか?について簡単に理解しておきましょう。
この物語は、主人公である葉蔵という男の一生について描かれた作品で、主人公自身の独白形式で物語が進んでいきます。
最初の「はしがき」と最後の「あとがき」は葉蔵の手記を読んだ「私」という人物の体験談で構成されていますが、それ以外の部分(第一の手記・第二の手記・第三の手記)は葉蔵の独白となっており、読者は主人公本人と対話しているような気分になるよう工夫されています。
作品を読むときには、葉蔵の「心情の変化」に注目しながら読み進めていくと良いでしょう。
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「はしがき」のあらすじ
1枚目は10歳くらいの葉蔵で、笑ってはいるがどこか不気味な表情を浮かべています。
2枚目は学生時代の葉蔵で、非常に美しい顔立ちで笑顔を浮かべていますが、どこか無機質なものを感じられる笑顔です。
3枚目は白髪になった葉蔵で、年齢も不明で「私」に不気味な印象を与えています。
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「第一の手記」のあらすじ
でも他人から嫌われることをすごく恐れています。
そこで彼が導き出した解決法が「道化」を演じることでした。
「道化」を演じることで皆を笑わせて、明るく愉快な少年として接します。
しかし、本心は「互いに欺きあって明るく生きる人間が理解できない」という状態で、結局は他人を理解できないまま少年時代を過ごしてしまいます。
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「第二の手記」のあらすじ
しかし、あるとき、クラスメートである竹一にその「道化」を見抜かれそうになります。
必死に竹一に近づくことで誤魔化ことができましたが、他人に対する葉蔵の恐怖はますます
深いものになっていきます。
そんな恐怖から逃れるように、東京に進学した葉蔵は、画学生の堀木という男と知り合います。
その堀木から葉蔵は酒やたばこ、風俗などの遊びを教えられ、のめり込んでいきます。
他人の恐怖をごまかすのに、ちょうど良かったためです。
そして、政府を批判し警察に捕まったり、カフェのアルバイトのツネ子という女性と心中を図り、葉蔵だけが生き残ります。
ここから葉蔵の破滅が始まります。
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「第三の手記」のあらすじ
様々な女性の家を転々とした後、たばこ屋の娘・ヨシ子と知り合い、婚約まで進みました。
しかし、ヨシ子が出入りの商人に犯されてしまうと、葉蔵は酒や薬に溺れるようになります。
そして再び、睡眠薬による自殺を図りますが、死にきれず、脳病院に入院することなります。
そこで、葉蔵は他人から「狂人」であるというレッテルを貼らていることを理解し、自らが「人間失格」をしたと悟るのです。
退院後は、兄に買ってもらった故郷の村はずれにある古びた家で、老女中と共に夫婦のよう
な生活を送ることになりました。
「あとがき」のあらすじ
マダムの「葉蔵は神様みたいにいい子」という葉蔵に対する評価で物語は終わります。
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「人間失格」の登場人物
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作品中では、主人公の葉蔵と、彼をめぐる多くの人物が登場します。
それぞれの人物が葉蔵の人格形成に与える影響がこの作品の見どころとなっていますので、整理しておきましょう。
人間失格の登場人物(一覧)
- 葉蔵 :子供の頃から臆病で、他人のことばかり気にしている男。何をしていても女性が寄ってくる美男子
- 竹一 :中学校の同級生で、葉蔵の道化を見抜く男。葉蔵の絵を高く評価しており、「将来、偉い絵描きになると」と指摘する
- 堀木 :葉蔵が通う画塾の生徒。葉蔵より年上(26~27歳)だが大変な遊び上手で、要蔵に酒やたばこ、風俗、政府批判などを教える
- ツネ子:カフェのアルバイトの女性。葉蔵と心中を図り死亡する
- シヅ子:雑誌の記者。葉蔵に漫画を描くことを進める
- シゲ子:シゲ子の娘(5歳児)
- ヨシ子:タバコ屋の娘で、葉蔵と結婚を誓う
- ヒラメ:葉蔵の身元引受人で、顔つきがヒラメに似ている
- 「私」:葉蔵の手記と写真をみて、物語を語る
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「人間失格」の見どころ・読書感想文を書く時のポイント
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「人間失格」の見どころは、ずばり「葉蔵の人生が崩壊していく様子」をリアルに描写しているという点です。
以下では、その中でも特に重要なポイントをまとめてみましたので、読書感想文を書く方は参考にしてみてください(これらの内容について、あなたがどのような感想を持ったのかを中心に書いてみるとまとめやすいとおもいます)
「第一の手記」のみどころ
この章では、葉蔵が他人から「人間」であることを認めるために「道化」を演じる様子が深く描かれています。
中でも、父親が旅の土産を葉蔵に訪ねるシーンは重要です。
特にお土産は欲しくなかったので、その場で答えることができなかった葉蔵。
返事のない葉蔵に対して、「本でいいか・・」と落胆する父親。
その姿をみて葉蔵は「父親に嫌われてしまった」とひどく怯えてしまいます。
そして、父親が眠っている隙に、父の手帳に「獅子舞」とメモを残します。
この行動には、素直な子供という「道化」を演じなければならないという葉蔵の心情が深く現れていますので、しっかりと押さえておいてください。
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「第二の手記」のみどころ
段々と生活が荒れていく葉蔵の姿が描かれているので、そこに注目してみてください。
特に、ツネ子と心中を図る前後の葉蔵の心理描写は重要です。
人間が怖いと思う葉蔵にとって、ツネ子という女性は心の開ける数少ない人間でした。
そんなツネ子も葉蔵と同じく辛い人生を歩んできました。
同じものを持っているツネ子を、葉蔵は深く理解することができたのでした。
お互いを理解できて人生に絶望をしている二人は入水自殺してしまいます。
ツネ子と葉蔵にとって、それが世間から解放される唯一の方法だったのですが、葉蔵だけが生き残り、失敗に終わります。
病院で目を覚まして葉蔵は、開口一番でツネ子の安否を伺いますが、ツネ子は既に亡くなっていました。
それを知った葉蔵は、自身の気持ちを吐き出します。
「ただ好きだった。生まれて初めて好きになれた人だった。」と。
それから、葉蔵自身の世間に対する恐怖心と絶望がどんどんと強くなっていきます。
以上が、生き辛い世界から解放されると思った葉蔵の本音と絶望が感じれるシーンですので押さえておいてください。
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「第三の手記」のみどころ
世間に絶望した葉蔵は、付き合う女性の家を転々とする自堕落な生活を送るようになります。
そんな女性の中でも、タバコ屋の娘・ヨシ子と出会ってからの葉蔵の崩落ぶりは非常に重要です。
他人を信じることのできない葉蔵にとって、ヨシ子の純粋無垢な立ち振る舞いは惹かれるものがありました。
「信頼の天才」と葉蔵自身が評するほどの純粋さに彼は救われ、酒や自堕落な生活をやめ真面目に働くようになります。
結婚後も幸せな夫婦生活を送れることができ、葉蔵も「人間らしいものになることができる」と感じるほどでした。
しかし、出入りの商人にヨシ子が犯されてしまいます。
必死にヨシ子を受けいれようと努力しますが、もはやヨシ子を信頼することはできません。
「無垢の信頼心は罪なりや」とヨシ子の純粋さを恐れるようになった葉蔵は、再び酒に溺れ始めます。
そして、睡眠薬自殺を図り脳病院に入院することになります。
入院して葉蔵は、自身の不幸が「拒否する能力のない者の不幸」であり「無抵抗は罪なりや」と悟るのです。
葉蔵の破滅が、葉蔵自身の「拒否しなかった」という行動によって、引き起こされたということに気付くまでの流れは重要ですので押さえておいてください。
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まとめ
今回は、太宰治の「人間失格」について解説しました。
本文で紹介しましたが、葉蔵の人生が崩壊に向かっていく様子は、この物語のキモとなる部分なので全体を通して押さえておくことが重要です。
「人間失格」で読書感想文を書く方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
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