この記事では、牟礼慶子による詩「見えないだけ」の指導案に悩んでおられる先生方に、生徒に授業で伝えておきたいポイントを紹介いたします。
感想文、テスト問題の例も載せてありますので、課題やテストの対策にも役に立つと思います。ぜひご活用ください。
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「見えないだけ」の指導案作成のポイント
詩という題材は、感覚でとらえる要素が強いなので、授業で扱うコンテンツとしては難しいと感じる先生は多いと思います。
詩を題材にした教材では、生徒に注目すべき点をあらかじめ示したうえで読み込んでいくのが理解を深めるポイントです。
具体的には、用いられている表現技法や、作者はこういう気持ちを伝えるために、こういう技法をあえて使っているんだということを説明していくと良いでしょう。
ぐっと詩の内容への関心が高まり、生徒の中から興味深い意見や発想が飛び出してくることもありますよ。
「見えないだけ」を使った授業では、次のような点が指導案を作成する際のポイントになるでしょう。
- ①「見えないもの」とは何か?
- ②この詩に込められた筆者のメッセージは?
以下、順番に説明していきます。
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①「見えないもの」とは何か?
第一連は、2行ずつのセットが5回繰り返されます。
そこには、5つの「見えない」ものが挙げられています。
もう少し詳しくいうと、奇数行にはその見えないものがある場所、偶数行には見えないものとは何かが述べられていますね。
まず、奇数行を読んで、「そこに見えないものがあるとすれば何だろう?」と想像してみましょう。
そして偶数行を読んで、筆者の考える「見えないもの」を確認しましょう。
それはなぜ見えないのでしょうか?
第二連を読むと、最後に「まだここからは」と書かれています。
まだここからは見えないものを、どうすれば私たちは見ることができるのか、それぞれ考えてみるといいでしょう。
②この詩に込められた筆者のメッセージは?
まず筆者は、「見えないけれど確かに在る」ものの存在を主張しています。
私たちは、今、目に見えるものだけを確かなものと考えて、それにとらわれてしまいがちです。
しかし、目に見えないものがあることに気づくことが大事だと訴えているのです。
それらを見ようとしたならば、何か行動を起こさなければなりません。
例えば、想像を膨らませる。思いを言葉にしてみる。これらのことで、今までよりも自分の世界が広がっていくはずです。
今いる場所から、一歩踏み出してみる。初めての人に声をかけてみる。そんな勇気ある行動も時には必要かもしれません。
そうやって自分の世界を広げていくことで、まだここからは見えないもの、新しいことにも、きっと気づくことができるはずです。
想像力や行動力をもって、豊かな人生を歩んでいきたいという筆者の気持ち、そしてこの詩を読んだ人にも、そのように歩んでもらいたいというメッセージを感じることができますね。
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「見えないだけ」の感想文の文例
小学生の頃には会ったこともない子と親友になることができたのも大きな変化だと思います。
こうした「新しいもの」は私が気づくよりも前に確かにそこに在ったのだけど、小学生の頃には見えなかっただけです。
きっと世の中には、まだここからは見えないだけのものが、もっとたくさんある。
それらを見るためには、たくさんの経験を積んだり、知識を身につけたりすることが必要なのだろうと思いました。
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「見えないだけ」詩の表現技法について
詩や文学作品を題材としている教材では、作品の中で使われている表現技法に注目してみると、より理解を深めることができます。
これらの表現技法は、作者としては何らかの意図があって使っているので、「作者はこの表現技法を使ってどういうことを伝えたいのだろう?」と考えることが大切。
「見えないだけ」では、次のような表現技法が使用されています。
- ①対句表現
- ②体言止め
- ③擬人法
以下、順番にくわしく解説していきます。
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①対句表現
対句表現とは、「文の形式」や「使われる言葉」を対比の関係にする表現です。
この詩では、1行目と2行目が対句になっています。
例えば、「空」と「波」、「上」と「底」が対になっていますね。
同じような文が繰り返されるので、そこにリズムが生まれます。
②体言止め
「体言」とは、主に「名詞」を意味します。
通常使われている文章では、体言で文が終わるということはほとんどありません。
その体言で文を終わらせる表現技法が「体言止め」です。
この技法を使うと、文が完結しない形になるので、イメージ的な余韻を残すことができます。
また、普通の文とは違うリズムを生み出すこともができ、読み手の楽しさや詩の世界感に広がりが出てくるという効果があります。
例えば、「胸の奥では ことばが優しい世界をはぐくんでいる」という表現と、「胸の奥で ことばがはぐくんでいる優しい世界」という表現を比べてみると分かりやすいですね。
③擬人法
人ではないものをまるで人のように表現する技法を「擬人法」といいます。
この詩では、「海が眠っている」「ことばがはぐくんでいる」がそれに当たるでしょう。
また、「蕾をさし出している」の主語は「美しい季節」と考えられますから、これも擬人法といえますね。
擬人法を使うことで、そのものの状態などをよりイメージしやすくなったり、親近感を持ち、感情移入しやすくなったりします。
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「見えないだけ」のテスト問題
「見えないだけ」の テスト問題の出題例としては、次のようなものが考えられます。
- ①擬人法について(1)
- ②擬人法について(2)
- ③筆者のメッセージについて
以下、それぞれについて解説いたします。
テスト問題例①:擬人法について(1)
解答例と解説
動かずに静かにしている状態
「波」と対比する効果を狙っているといえるでしょう。
波はたいてい動きがあり、私たちの目は、動いているものにとらえられがちです。
しかしその底には、じっと動かずにいる大きな海があることに筆者は目を向けているのです。
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テスト問題例②:擬人法について(2)
解答例と解説
- A:花
- B:蕾(つぼみ)
ここは、「美しい季節が蕾をさし出している」と考えることができます。
蕾はやがて花になりますから、まだ見えない美しい季節が、やがて花が咲くことを「蕾をさし出して」教えてくれていると筆者はとらえているのでしょう。
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テスト問題例③:筆者のメッセージについて
- ア:見えないものの存在を感じ取るセンスを大事にしたい
- イ:見えないものはどうしようもないのだからあきらめが肝心だ
- ウ:まだ見えないものも自分が行動を起こせば見えてくるはずだ
解答例と解説
イ
「優しい世界」「美しい季節」「新しい友だち」と、前向きなイメージの言葉が「見えないもの」としてあげられています。
決してそれらをあきらめようと訴えているのではありません。
特に「新しい友だち」は、「少し遠くで 待ちかねている」と表現されています。
新しい出会いを求めて生きていこうという、前向きなメッセージを感じることができます。
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