五千円札の肖像画にもなっている樋口一葉の代表作といえば「たけくらべ」です。
作品の名前を聞いたことがある方は多いと思いますが、古典的な文章で書かれているため、むずかしい印象がある作品ですね。
今回は「たけくらべ」のあらすじと内容を簡単にわかりやすくご紹介いたします。
読書感想文の制作などにも、ぜひ参考にしてみてくださいね。
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「たけくらべ」のあらすじを簡単に解説!
「たけくらべ」あらすじ
吉原辺りに住んでいる主人公の美登利は、歳もまだ13~14歳の女の子。
姉が吉原一の花魁で、美登利もまた、将来は遊女になると決められていた。
表町の幼馴染の正太郎と仲が良くいつも遊んでいたが、祭りの日、ライバルである横町の長吉とその子分たちとケンカになり、表町と横町はさらに仲が悪くなる。
その横町の長吉の後ろにいたのが、龍華寺の信如だと知り、美登利は信如を嫌うようになる。
そんなある雨の日、美登利の家の前で鼻緒が切れてしまい困っていた信如。
美登利は戸惑いながらも、信如に端切れを投げてやるが、それを信如は無視してしまう。
そのことにショックを隠しきれない美登利だった。
そして、それから幾日が過ぎ、美登利は髪を島田に結わえ、その日から家にこもりがちになってしまう。
正太郎とも、他の子供たちとも遊ばなくなり、ずっと家に引きこもっていたある日、美登利の家に造花の水仙が置かれていた。
誰がそんなことをしたのかわからなかったが、美登利はなぜか懐かしい気持ちになる。
それは、信如は坊主学校に転校してしまう前日だった。
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「たけくらべ」登場人物
「たけくらべ」には、次のような人物が登場します。
「たけくらべ」登場人物
- 美登利:歳は13~14歳。姉御肌で活発、気が強く太っ腹な性格だが少々意地っ張りなところがある。姉は吉原一と言われる花魁・大巻で、将来は姉と同じ遊女になると決められている
- 信如:龍華寺の跡取り息子。生臭な父親を軽蔑している。真面目で気が弱く、周りを気にする
- 正太郎:表町の子供たちのリーダー。美登利の幼馴染で、美登利より1つ下。金貸し屋の子供で、明るくて人懐っこい。美登利に密かに好意を抱いている
- 長吉:横町の子供たちのリーダー。鳶職人の息子。気が短くて喧嘩っ早く、正太郎をライバル視している。歳は一番上だが、信如にはなぜか頭が上がらない
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「たけくらべ」の見どころ(内容ネタバレあり)
ここからは、「たけくらべ」の見どころについてくわしくご紹介します。
読書感想文を書く必要がある方は、次のようなポイントに注目しながら作品を読み込んでみてください(一部ネタバレを含みますので、注意してください)
美登利と信如の関係
美登利と信如は、お互いに素直になれない関係でした。
きっかけは、運動会の日に、転んで泥だらけになった信如に、美登利がハンカチを渡し、泥を拭くように言ったところを、周りの子供たちにひやかされたのが原因でした。
信如は臆病だったので、これ以上美登利とのことをひやかされて、噂にでもなったらかなわない、と、それ以降美登利を避けるようになったのです。
そうとは知らない美登利は、「なぜわたしにだけ、あんなにつれない!」と、信如を憎らしく思うようになってしまったのです。
それ以降、美登利と信如は、ギクシャクした関係になってしまいます。
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美登利と信如の恋
恐らく二人は、もともとお互い気になる存在だったのでしょう。
でも、子供ゆえに、恋とはなんなのか、すら知らなかったために、憎いけど気になる、気になるけど憎たらしい、という関係になってしまいました。
それを表している、「たけくらべ」一番の見どころが、雨の日の鼻緒のシーンです。
親のおつかいに出掛けていた信如。
近道だからと、別に通らなくても良い美登利の家の前を通りかかります。
ところが運悪く、美登利の家の前で鼻緒が切れてしまいます。
雨の中、おぼつかない手元で鼻緒をなおそうとする信如でしたが、美登利の家の前ということもあり、焦ってなかなか直りません。
そこに、誰かが鼻緒を切らしたと、端切れを持って玄関の格子の前まで出てきた美登利は、それが信如だと分かると、途端に動けなくなってしまいます。
いつもの美登利であれば、文句の一つでもいいながら、声を掛けたでしょう。
でも、美登利はそれが出来ませんでした。
美登利は家にいる母親に「戻ってきなさい」と言われ、結局声を掛けられず端切れだけを格子の隙間から投げ渡しますが、信如はそれを無視してしまいます。
美登利はそれにショックを受け、そのあと泣き暮れてしまいます。
一方信如は、その端切れを拾おうと思いますが、結局拾うことが出来ませんでした。
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最後の別れ
ある日、美登利の家の格子に、造花の水仙が置かれていました。
誰がやったのか、なぜやったのかわかりませんでしたが、美登利はそれを見て、なぜか懐かしい、心に沁みる気持ちがしました。
その次の日に、信如は坊主学校へ転校してしまいます。
そして、そのことを美登利が知ったのは、後になってからでした。
坊主学校へ転校ということは、もう二人は、二度と会うことが無いということです。
作中には、その水仙が誰からなのか触れられていませんが、恐らく信如が最後のお別れに、美登利に渡したプレゼントだったのでしょう。
たけくらべ論争
作中に、美登利が髪型を島田に結う、というシーンがあります。
それ以降、美登利は正太郎や他の子供たちと遊ぶことをしなくなります。
島田に結った日に、美登利は「大人になんてなりたくない!」と泣き崩れてしまうのですが、この島田に結ったことを、どう解釈するかという論争がおきました。
これが、「たけくらべ論争」です。
「初店」遊女として初めてお客がついたからでは?という派と、「初潮」を迎えたのでは?という派とで分かれており、今だ謎のままです。
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「たけくらべ」読書感想文の例文
上のような見どころをポイントとして押さえたところで、読書感想文の例文を見てみましょう。
登場人物の関係性について
主人公である美登利は、勝ち気でおきゃんな性格です。一方信如は、真面目で気が弱く、周囲を気にしてしまう性格です。
そのせいか、二人はいお互いに素直になれず、美登利が信如にハンカチを渡すときなど、美登利のハンカチを振り払ってしまいます。
思春期だからなのでしょうが、その素直になれないところが歯痒く感じました。」
美登利と信如の恋についてです。
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美登利の恋心について
雨の日に、信如が鼻緒を切ってしまうところでは、あんなに勝ち気な美登利が、どうしていいのかわからず、声もかけられずにいました。
素直になれない気持ちと、どうしてかドキドキしてしまう気持ちとで、美登利の恋心が切なく感じ取れました。
また信如も、背中に美登利の気配を感じていながら、鼻緒を上手く直せずにいるところから、美登利への恋心を感じ取れます。
思春期の素直になれない時期というのは、今も昔も変わらないのだと感じました。
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最後の別れの部分について
ある日美登利は、玄関の格子に造花の水仙が置いてあることに気づきます。
そして、なんだか懐かしいような気持ちになります。
そして、次の日に、信如は坊主学校へ転校してしまいます。
恐らくその造花は、信如から美登利への、お別れのメッセージだったのではないでしょうか。
その造花には、もう昔には戻れないという思いや、いつまでも変わらない想いなども込められていたのではないかと思います。
そして、決して結ばれることはないことも、信如は分かっていたのではないかと思いました。
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「たけくらべ」読書感想文を書く時のポイント
「たけくらべ」の読書感想文を書く時に、ポイントとなる部分をご紹介します。
上で見た例文を見返しながらチェックしてみてください。
美登利と信如のもともとの関係
なぜ、お互いに素直になれなかったのか、というのは二人の関係に原因があります。
そこを触れておけば、この後の見どころの部分につなげやすくなります。
二人の恋心
雨の鼻緒のシーンは、「たけくらべ」一番の見どころです。
このシーンの説明を入れながら、二人の心情や、それについての感想を書いていきましょう。
最後の別れ
ラストシーンは、二人の恋の行方や、信如の気持ちなどが伝わってくる場面です。
この場面で大事なのは、造花の意味です。
自分なりに、信如の造花に込めた気持ちを解釈して、感想を書きましょう。
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まとめ
今回は、樋口一葉の「たけくらべ」について、あらすじや見どころなどを簡単にご紹介しました。
なかなか読むには難しいですが、幼いころの淡い恋心を描いた作品です。
もし時間があれば、原作を読んでみてください。
独特な世界観に、惹かれるかもしれません。
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