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「草枕」は、「吾輩は猫である」「坊ちゃん」と並ぶ、夏目漱石の初期の名作です。

「とかくに人の世は住みにくい」という冒頭文で広く知られていますが、じゃあ内容は?と聞かれたら、そう言えば知らないな…。と言う方も多いのではないでしょうか。

そんな方のために、この記事では「草枕」のあらすじを、簡単・簡潔に説明します。

読書感想文を書く時のポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

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「草枕」のあらすじを簡単に紹介!

「草枕」あらすじ

日露戦争の時代、世の中に生きづらさを感じている30歳の画家は、一人、物思いにふけりながら田舎道を旅していました。

その途中に立ち寄った茶屋で、画家はこの土地の伝説「長良の乙女」の話を聞かされます。

さらに茶屋のお婆さんは、この先にある温泉宿「志保田」の娘が、まるで「長良の乙女」のようだと言い、画家はその娘に興味を持ちます。

「志保田」に到着した画家は、茶屋で聞いた娘、那美と出会います。

那美は望まない結婚した後、旦那の勤め先の倒産が原因で離婚しており、周囲から「薄情だ」などと、悪い噂を立てられていました。

美しいが風変わりな言動をする那美に戸惑いながらも、画家はますます関心を深めて行きます。

ある日、画家は那美から自分の絵を描いて欲しいと頼まれます。

しかし、「那美には何かが足りない」と感じた画家は、絵を描かずにいました。

果たして、那美に足りないものとは一体?

そして画家は那美の絵を描く事が出来るのでしょうか?

山里の自然と、そこに住む人々との触れ合いを通して、画家の美学が繰り広げられて行きます。

>>夏目漱石のその他の作品一覧

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「草枕」の鍵となる登場人物

「草枕」では、登場人物についてあまり詳しく描かれていません。

読者を「草枕」の世界に導く4人を簡単に紹介します。

「草枕」の登場人物

  • :東京出身の洋画家、30歳。本名は不明
  • 那美:温泉宿「志保田」の美しい娘。出戻り
  • 久一:那美の甥。日露戦争への出征が決まっている
  • 野武士:那美の別れた夫

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「草枕」の見どころ(ネタバレあり)

「草枕」は、主人公の独白形式でつづる、漱石の芸術論です。

この作品のみどころは、ストーリー展開よりも、その合間に垣間見える主人公の「価値観」や「美意識」と言えるでしょう。

ここでは、主人公の内面をより良く理解するためのポイントをご紹介します。

漱石作品の中での「草枕」の位置付け

「草枕」は、1906年(明治39年)、漱石が39歳の頃に書かれた小説です。

漱石は、「吾輩は猫である」「坊ちゃん」に続き、この作品をわずか2週間ほどで書き上げました。

風刺に溢れた「吾輩は猫である」、コミカルな「坊ちゃん」と比べると、「草枕」はかなり作風が違っています。

漢詩や英文学の一部が多用される文章には、漱石の学者的な部分が色濃く現れており、他の作品以上に、主人公に漱石自身が投影されていると言えます。

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「智に働けば角が立つ」の意味

山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。
情に棹(さお)させば流される。
意地を通せば窮屈だ。
とかくに人の世は住みにくい

この冒頭の一文は、主人公の現在の心境を物語る重要なパートです。

その意味を現代語訳で簡単に言うと、次のような意味になります。

「智に働けば角が立つ」の意味

知恵を使って動くと人ともめてしまう。

人に同情すると自分がなくってしまう。

意地を張ると身動きが取れなくなる。

こういう人間の社会というのは、とにかく面倒で生きづらいものだ。

この気持ち、現代でもとても共感できますよね!

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「草枕」のキーワード:非人情と憐れの意味

「草枕」には「非人情」と「憐れ」と言う言葉が繰り返し登場します。

この二つは、この作品を読み解くキーワードです。

「非人情」とは

四角な世界から常識と名のつく一角を摩滅して、三角のうちに住むのを芸術家と呼んでもよかろう。

この一文から考えて「非人情=非常識」と言えます。

ここでの「非常識」は、現代的な「分別のない」という意味ではなく、「自由な」と言う表現が、最も近いのではないでしょうか。

主人公の言う「非人情の旅」とは、人間社会を縛る「常識」にわずらわされない自由な旅、と言えますね。

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「憐れ」とは

那美さんは茫然として、行く汽車を見送る。

その茫然のうちには不思議にも今までかつて見た事のない「憐れ」が一面に浮いている。

「それだ!それだ!それが出れば画(え)になりますよ!」

物語のラスト、那美さんが汽車から顔を出す元夫を見送る場面の一文です。

これまで気丈だった那美さんの顔に現れたのは、元夫との永遠の別れに対する「哀しみ」でした。

「憐れ」=「哀しみ」ですね。

ここで主人公は、やっと那美さんの絵を描く気持ちが湧いて来ます。

芸術は「哀しみ」から生まれるもの、と言う事なんですね。

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「草枕」に見る夏目漱石の西洋化への抵抗

「草枕」の中では、東洋文化と西洋文化がよく対比されています。

羊羹とシュークリーム、お吸い物とサラダ、東洋の詩歌と西洋の詩、そして穏やかな田舎の暮らしと戦争。

漱石は、人間中心の文化である西洋文化に対して、東洋文化は自然中心の文化だと捉え、東洋文化の気高さを綴っています。

漱石が西洋文化の象徴として描いているのが汽車です。

汽車は人間の個性、人と人との縁などを全て奪い去って行くものとして描かれています。

「草枕」が描かれた明治時代は、日本の西洋化が加速して行く時代でした。

「草枕」は、そんな東洋と西洋の文化の間で揺れた人間の気持ちを描いた作品でもあるのです。

「草枕」で漱石が伝えたかった事

「草枕」では、大きな事件もドラマティックな恋愛も、何も起こりません。

美しい文章と描写が、ただただ流れて行きます。

そんな「草枕」は、作品自体が芸術と言えます。

漱石がこの作品で読者に感じて欲しかったこと、それは「美」のみだったのでしょう。

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「草枕」の読書感想文を書くときのポイント

「草枕」は、漱石の作品の中でも読みにくい作品と言われています。

それは、現代人にはなじみのない漢詩や古い言い回しによるものです。

そんな「草枕」を読破して、読書感想文を書くにはどうすればいいのでしょうか?

まずは挫折せずに読破すること!

読破するためにまずぶち当たるのが「漢詩」の壁です!

正直に言ってまったく意味がわかりません。

なので、まず漢詩部分は漢字から受けるイメージだけを頭に描くようにしましょう。

簡単にいえば、深く考えずさっさと次に進んでしまうということですね(それでも内容を把握するのに問題はありません)

登場人物の会話はユーモラスで、文章にも流れがあります。

漢詩に拒絶反応さえなくなれば、案外スイスイ読み終えられますよ!

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ストーリーは重要ではない!

何度も言いますが「草枕」には特にこれと言ったストーリーはありません(それがこの作品の特徴なのです)

読んでいて「ん?なんで突然こうなるの?」と思っても、気にする必要はありません。

その場面の映像をイメージする方が大切です。

絵を見るような気持ちで読む

「草枕」は、主人公が画家と言うこともあり、とても絵画的な作品です。

どのシーンを切り取っても、美しい絵になります。

絵を見てどう感じるかは人それぞれ。

感想文を書く時も、あまり常識に捕らわれず「非人情」に書いて行きましょう!

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まとめ

今回は「草枕」について解説しました。

この作品の中では、ミレーの「オフィーリア」など、芸術作品がたくさん登場します。

これらの作品は「草枕」の世界をイメージするためにもとても重要です。

興味のある方は、ぜひチェックしてみてくださいね。

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